★「後宮学園にようこそ」★


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第一日 赴任の日(1)

 「後宮学園」
 確かにそう書いてある。この学校の入口には。
 昨日かかってきた電話で話していた女性の話では、これで「うしろのみや」と読ませるらしいのだが…どう見たって「こうきゅう」と呼ばれるよな、これじゃ。よくまぁこんなあらぬ想像をさせるような校名をつけてしまったものだ。しかも女子高らしいじゃないか、ここは。「うしろのみや」というのは地名なんだろうか、それとも創業者の苗字だとか…。
 僕はとある町の郊外にある学校の校門に立っていた。町からそう離れたところではないのだが、辺りは人気も無く閑散とした印象を受ける。
 そんなところにいきなり高い塀に囲まれた、ちょっと洋館風な印象を与える校舎がそびえている。これがその「後宮学園」というわけだ。
 なんと僕は今日からこの学園に「校長」として赴任することになったのだ。
 と、何気なく書いているが当然ながらこの時点では驚くというより何かに化かされているような気分だった。
 とにかく唐突な話だったのだ。いきなり僕の下宿に電話がかかってきたのは前日の夕方頃のことだった。受話器を取ると、耳をくすぐるような綺麗な女性の声が聞こえてきた。
「…宮城、賢司さまでしょうか?」
「はい…」
「ご本人でいらっしゃいますね?」
「ええ」
「誠に失礼ですが、あなたの母方のお祖父さまのお名前を言っていただけますか?」
「お祖父さん?」
 まったく僕の知らない女性のようだ。それなのに何となく聞き覚えのある声のような気はこの時からしていたのだが…。この時は、いきなり赤の他人に祖父の名前を聞くとは何事だろうと当然不審に思ったものだ。
「祖父ですか。金田辰也と言いますが」
 僕があっさりと答えると、
「申し訳ありませんが、実際に血の繋がっておられるお祖父様、という方がいらっしゃいませんか?」
 という言葉が返ってきて驚いた。
 そうなのだ。僕の現在の母は実際には僕と血のつながりはない。僕は父の「私生児」という扱いになっていて、少々ややこしい事情があるのだ。
 簡単に聞いているところでは、僕の父は学生時代にある女性と恋に落ちて、その女性に僕を産ませる結果となった。しかし周囲の反対やら何やらでなかなか結婚・入籍というふうに進まず、ズルズルとしているうちに僕の母が交通事故で突然亡くなってしまったのだ。僕の父はまだ赤ん坊の僕を引き取り、新しく迎えた妻(つまり僕の現在の母)と一緒に僕を育ててきたという次第だ。
 僕が大きくなると、このいきさつは両親から聞かされた。そして僕を実際に産んだ女性、つまり僕の本当の母の名前も明かしてもらった。その時は詳しくは分からなかったが、その母の実家はかなりの資産家だそうで、その母の父親、つまり僕の実の祖父というのがいろいろと事業を展開しているかなりの大物であるらしいということまでは分かった。
 僕が大人になっていろいろと調べられようになると、さらに詳しい事が分かってきた。
 僕の本当の祖父は、その名を二宮敬蔵という。
 しかし今の今まで会ったこともなかった。というより、そもそも父と僕の実の母が結婚できなかった原因には、この実の祖父が結婚に反対したという経緯もあったようだ。そのためこの祖父は僕の父に対してとても好意的とは言えず、ましてや自分の娘が事故でなくなったあとは、父や僕には一切接触を持たないようにしていたという。
 僕もこの祖父については芸能ニュースなどでたまに見かけて、ああ、これが本当の祖父なんだなと思うことがあった程度だ。そう、この祖父は最近芸能プロダクションなど設立してしまい、芸能界になぐり込みをかけていたのである。
 まさに「なぐり込み」という表現が的を得ていた。次々とアイドルグループを結成して売り込みヒットチャートを独占してみせたり、一方で正統派・演技派の女優を次々とドラマや映画に出して注目を浴びさせてみたり、とにかく物凄い勢いで芸能界を「二宮プロ」が席巻していった。その資金力に物を言わせて優秀な芸能人を養成し、その資金力をまた芸能界にばらまくことで売り込みを成功させていったと言われている。
 こんな祖父なのだが、とうとう僕は直に会うことはなかった。この二宮敬蔵は先週亡くなったのである。
 経済界や芸能界の大多数が出席する、壮麗な葬儀が行われたそうだが、当然ながら僕は葬式にも出ることはなかった。確かに血は繋がっているかも知れないが、事実上縁もゆかりもない他人同然だ。
 僕としてもそれほどこの祖父に親しみがあったわけでもなく、その死も別段悲しいと思ったこともなかった。それよりも大学を卒業して、この不景気の中、まったく職が見つからず苦労していて、その事に必死になっているという状況で、祖父の死をいちいち気にしてなどいられなかったのだ。
 そしたらこの日、唐突な電話。そしてその祖父の事を持ち出されたわけだ。だから大いに驚いた。
 僕がそのまま黙っていると、
「もしもし?賢司さん?」
 と、電話の向こうの女性が返事を促してきた。仕方ない、僕は不審がりながらも質問に答えることにした。
「ええ…本当の祖父は…二宮…敬蔵です」
「やっぱり。ご存じでしたのね、よかった」
 よく分からないが、電話の向こうの女性はホッとしたような声を出していた。そして、今度は事務的な口調になっていった。
「賢司さん。その二宮氏が亡くなったことはご存じですね?」
「ええ」
「実は、二宮氏があなたに遺産を残しておられます」
「遺産?」
 これは驚いた。これまで全くの赤の他人同様のはずだったが。
「そうなのです。実は二宮氏にはお子さまもおられず、その財産を引き継ぐ方は誰もいないのです。しかし、遺言で実の孫に当たる宮城賢司さんに遺産の一部をお譲りしたいと言い残しておられたのです」
 これまたビックリだ。いきなり降って湧いたような話だ。貧乏な就職浪人にいきなり巨額の遺産…なのか?
 当然と言うべきだろうが、僕はこれは何かの間違いか、詐欺ではないかと疑った。美味しい話をもちかけて逆に金をとる…ありうる。ありうる。
「お疑いはごもっともです。まずはお話を直接会ってご説明いたします。遺言書も見ていただきますわ」
 僕の一瞬の沈黙の意味を悟ったように、電話の向こうの女性は言った。
「明日、そちらにタクシーを差し向けます。それに乗ってこちらまで来てください。こちらは「後宮学園」という女子高です」
「…女子高?」
 話の展開が飲み込めず、僕は聞き返した。その「うしろのみやがくえん」とやらいう女子高がなんでこんなところに出て来るんだ。
「実は賢司さん、お祖父様の貴方に残す遺産とは、お金ばかりではないのです。お祖父様はあなたのことをずっと気遣ってらっしゃって、あなたにこの世で一番大切なものを贈ってあげると言い残しておられるのです」
 まだどうにも話が飲み込めない。電話の相手はそのあとにビックリするようなことを言い出した。
「あなたには「後宮学園」の校長になっていただきます。それが二宮さんの御遺志なのです」
 
 とにかく訳も分からぬまま、僕はこうしてその「後宮学園」の校門に着いていた。
 何かの詐欺じゃないかと疑っていたのだが、今朝になって実際にタクシーが来てしまうと、まず興味が先行した。
 とりあえず行ってみるだけ行ってみようじゃないか。何かの詐欺だと分かったら逃げればいい。用心しておくことだ。
 それと、ウソにしてもちょっと手が込みすぎていると思っていた。女子高なんてものを急に持ち出す辺りは詐欺師ならやらないところだろう。それに僕の出生の事情をこれほど知っているという人物に会ってみたい気も充分にあった。
 それと、就職困難な状況に追いつめられていることもあり、何か仕事があるのなら、という気分だったことも否めない。
 タクシーは郊外の町々を抜けて、いつしか田園風景の中を走っていた。そしてその中にいきなり「後宮学園」の校舎が出現したわけだ。
 タクシーを降りた僕は校門の前で途方に暮れたように突っ立っていた。どうしたものだろう。校門がガッチリと閉まっている。
 周囲は高い塀で囲まれていて、まるで刑務所のような印象すらある。校門も同様で、内と外をガッチリと遮断する重々しさを備えた頑丈そうな扉だった。
 なんでまたたかが女子高にこんな厳重な設備が必要なのだろう。
 耳を澄ませば中から女子高生らしい歓声がかすかに聞こえてくる。校庭でスポーツでもやっているらしい。
 塀の上に上部をのぞかせている校舎らしき大きな建物は、冷たく頑丈そうな塀と対照的に、いかにも女子高らしい明るく華やかな色に染められている。どこか宮殿を思わせる豪華さが、その一部からもうかがえる。
 とりあえず、ここまでは本物というわけだ。
 僕があれこれ考えながら校門の前で待っていた時間は、それほど長くはなかった。すぐと言っていいぐらいの時間で校門の扉がギイイッと音を立てて開いたのだ。
 そこには一人の女性が立っていた。
「はじめまして、賢司さん。後宮学園へようこそ」
 あ、この声は確かに昨日の電話の…
 と思って、その女性の顔を見て、僕は愕然とした。
(女優の…石田めぐみだ…)
 そうだったのだ。最近若手の演技派美人女優として名声も固まってきた「石田めぐみ」が、僕の目の前に立っていたのだ。
(そうか、そういえば昨日の電話もどこか聞き覚えのある声だったような…)
 僕が呆然としていると、石田めぐみはテレビや映画で見せているのと同様に艶然と微笑んで、僕に手を差し伸べてきた。
「よろしく。ビックリしましたか?私のこと、ご存じだったら嬉しいですわ」
「そんな…あなたのことを知らないなんて人はそうそういないでしょ」
「ありがとうございます。あ、こんなところで立ち話も何ですから、中へお入りください。校長室でお話ししましょう」
 石田めぐみは僕の手を取ると…僕はこれだけで全身がしびれるほどに感激してしまっていたものだが…僕を引っ張るように校舎内へと導いていった。
 僕の背中の向こうで校門の扉が静かな音を立てていつの間にか閉まっていった。

 校舎は五階建てだった。外から見たとおり、どこか明治時代ぐらいの洋風建築の面影を感じるデザインとなっている。実際に間近で見てみると思ったより巨大だった。
 辺りを見渡すと、普通の学校と同様にグラウンドがあり、体育館らしき建物も見える。また敷地内には校舎と離れた別棟があり、外見から察すると学生寮のようだった。
 驚いたのは塀で囲まれたこの敷地内の一角に、こんもりと茂る森が存在していたことだ。よく見るとちょっとした丘や芝生のようなものもあり、小川らしきものまで流れているのがみえる。たぶん学園内の憩いの場として作られた自然公園のようなものなのだろう。
 校庭では女の子達が高い声で楽しそうに話しているのが聞こえる。休み時間だったらしく、校庭のあちこちで女の子達がグループを作り、ボールで遊んだり、自然公園の中を散策しているのが見えた。
 制服は面白いことにいろいろあるようだ。古典的なセーラー服の一団がいるかと思えば、ブレザー姿の一団もいる。ひょっとすると学年やコースによって制服が違うのかも知れない。
 ボールで遊んでいる女の子達は体操服姿だった。最近は見かけなくなったブルマ姿も見える。
 年頃の綺麗な女の子達が遊び戯れているのを見るのは、やはり男にとっては素晴らしい目の保養だ。女子高というものに潜入するのはこれが初めてだが、何やら世間から隔絶された秘密の園という風情がある。
 こうした女子高生達を眺めることももちろん目の保養だったのだが、この時は何と言っても目の前に本物の美人女優が存在していて、そして僕の手を握ってくれていた。しかもそれは僕が結構お気に入りにしていた女優石田めぐみ本人なのだ。
 目の前で見る「生めぐみ」はブラウン管に映るそれよりも、やはりずっと綺麗で生き生きとしている。セミロングの髪はサラサラと僕の目の前で揺れ、そのたびにとても良い香りが僕の鼻をついた。
 手を引かれながら後ろからその体を上から下まで眺めてみると、そのプロポーションの良さに惚れ惚れする。肩のなだらかなラインから、腰のキュッとしたくびれ、そして…小ぶりにひきしまったお尻がその下で彼女の歩調に合わせて揺れている。
 ゴクッと、思わず唾を呑んでしまった。そりゃそうだ、こんなのテレビや映画では見られやしない。手を伸ばせば触れられるぐらいのところで、あの「石田めぐみ」のお尻が揺れているのだ。もちろん本当に手を伸ばして触れたりはしなかったが、僕は我知らず興奮してしまっていた。
 気が付くと僕は彼女に引かれている方の手で、彼女の手をギュッと握り締めてしまった。すると、彼女がこちらを振り向いた。
 いけね。つい…と手を引っ込めようとしたが、今度は彼女が僕の手をギュッと握り返してきた。そして狼狽気味の僕に向かってニコッと微笑みかけてきたのだ。あの「石田めぐみ」が、だ。
 僕は夢見心地のまま、彼女に手を引かれて校舎の中を進んでいった。

 やがて「校長室」と書かれた部屋の前に着くと、めぐみは僕の手を離した。そしてドアをコンコンとノックする。
 僕が自分の手を撫でながら彼女の手の残していったぬくもりの余韻にひたっていると、ガチャリと校長室のドアが内側から開かれた。
「あら、おいでになったんですね」
 中から扉を開けたのは、若い女性だった。  OLっぽいビシッとしたスーツを身にまとっているが、小ぶりな顔に似合わずなかなかグラマーな体格が一目で見て取れた。
「お待ちしておりましたわ、賢司さん」
 ドアを開けた女性は吸い込まれるような明るい笑顔を見せて、僕に手を差し出してきた。
(あれ…)
 僕は差し出された手を反射的に握って握手を交わしながら、いわゆる「デジャブ」に襲われたような気がした。そう、確かこの女性にも見覚えがあるぞ。
「さあ、みどりもご挨拶しなさい」
 握手している当の女性が、部屋の中にいたもう一人の女性に声をかけた。
「はーい。初めまして、賢司さん」
 そういいながら、これまたなかなかグラマーな体格にアンバランスなような愛らしい顔を乗せた女性が僕の方に近づいてきた。この「みどり」と呼ばれた女性もやはりスーツで決めている。よく見ればこの二人、お揃いの服を着ていた。
(おそろい…みどり…?)
 その瞬間、僕の脳裏にひらめくものがあった。
(この二人、あの「ブリンク」じゃないか!)
 二年前ぐらいにセクシー系アイドル歌手として一世を風靡していた「はるか」と「みどり」の二人組だ。実は僕も一時期ひそかにファンだったりしたのだが…いきなり目の前に、しかもスーツ姿で登場されてはすぐに分かるものではない。
 考えてみれば、この「ブリンク」の二人も、そして僕をここまで連れてきた石田めぐみも、僕の実の祖父が経営していた「二宮プロ」の専属芸能人だ。となると、まだまだ話の実態が見えてこないものの、どうやら詐欺なんてものではないらしい。
 これは説明を聞いてみなければならない。僕は期待と不安とが入り交じりつつここまで来たのだが、ここで不安の部分はかなり解消されたような気がした。
「さあ、こちらへ、賢司さん」
 「ブリンク」の二人に誘われるままに、僕は校長室のドアの目の前に置かれた、応接用のソファへと腰を下ろした。来客側ではなく、校長が座る位置に僕は座らされた。
 そして向かいの来客側にはめぐみが、そして奇妙なことに「はるか」と「みどり」の二人は、僕の座るソファの両端に腰を下ろし、僕を挟む形になった。

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